東京神奈川川崎横浜横須賀・関東一円・全国対応・発明相談特許調査商標調査知的財産コンサルティング特許出願実用新案登録出願意匠登録出願商標登録出願PCT出願マドプロ外国出願坂野国際特許事務所(横浜関内)】








坂野国際特許事務所
代表: 弁理士 坂野博行
詳しいプロフィールはこちら

 大手企業の知的財産部での7年の経験、及び大手特許事務所(スタッフ100名、弁理士数十名)での8年の経験を生かして、依頼者の立場に沿ったリーガルサービスが可能です。

〒231-0013 
神奈川県横浜市中区住吉町1-6
M・P・S関内 601号

TEL : 045-227-5117
FAX: 045-227-5118

【対応地域】東京都・神奈川県・埼玉県・山梨県・千葉県等の関東一円、及び全国対応

 遠方では、例えば、大阪、九州及び岡山の国立大学法人様からも依頼実績があります。

-更新履歴-
















ホーム判例集に関するご案内大合議事件集 > 事例2(平成28年(行ケ)第10182号 審決取消請求事件、平成28年(行ケ)第10184号 審決取消請求事件、特許権、発明の名称: ピリミジン誘導体(特許番号:第2648897号) 判決言渡日 平成30年4月13日)

      事例2|大合議事件集


事例2                 平成28年(行ケ)第10182号 審決取消請求事件
                     平成28年(行ケ)第10184号

目次
 <概要>
 <結論>
 <解説>
 <まとめ・余談>

 本サイトは、上記<概要>、 <結論>、 <解説>及び<まとめ・余談>で構成されています。項目をクリックすると当該説明の箇所へジャンプします。時間のない方は、概要、結論、まとめ・余談等を先に読まれると良いかもしれません。
 より理解を深めたい方は、解説を参照すると良いかもしれません。更に理解を深めたい方は、実際に判決文と、特許明細書を入手して分析をする事をお勧めします。



                                                  概 要

<概要> 
 大合議事件について集めたものの一部をご紹介します。事例2(平成28年(行ケ)第10182号 審決取消請求事件、平成28年(行ケ)第10184号 審決取消請求事件、特許権、発明の名称: ピリミジン誘導体(特許番号:第2648897号) 判決言渡日 平成30年4月13日 )は、「技術的思想」に関する裁判例です。
 争点は、訴えの利益の有無、進歩性の有無、及びサポート要件違反の有無ですが、ここでは、特に中間処理に利用できそうな部分に焦点を絞って解説してみます。
 
                                              ページトップへ


                                                  結 論

<結論>
 第29条1項3号の「刊行物に記載された発明」については,当業者が,出願時の技術水準に基づいて本願発明を容易に発明をすることができたかどうかを判断する基礎となるべきものであるから,当該刊行物の記載から抽出し得る具体的な技術的思想でなければならない。
 そして,当該刊行物に化合物が一般式の形式で記載され,当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合には,当業者は,特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り,当該刊行物の記載から当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできない。
  したがって,引用発明として主張された発明が「刊行物に記載された発明」であって,当該刊行物に化合物が一般式の形式で記載され,当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合には,特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り,当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできず,これを引用発明と認定することはできないと認めるのが相当である。 (判決文抜粋)

 本例は、刊行物に化合物が一般式の形式で記載され,当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合に、引用発明とすべきかどうかに関するものです。

 特許無効審判請求を不成立とする審決の取消訴訟において、どの様に判断されたのでしょうか?
 本件は、ある特定化合物の置換基について、一般式化された式中の選択肢の一つとして、特定の置換基の記載がある場合、当該特定の置換基を構成要素とする本件発明の進歩性について争われたケースです。
 
 進歩性を有するのでしょうか、それとも?

 それでは、より具体的に内容を解説していきます。

                                              ページトップへ


                                                  解 説

<解説>
 特許第264009号の請求項1記載の発明は、以下の通りです。
「【特許請求の範囲】
請求項1
式(I):
【化1】

(式中,
R1は低級アルキル;
R2はハロゲンにより置換されたフェニル;
R3は低級アルキル;
R4は水素またはヘミカルシウム塩を形成するカルシウムイオン;
Xはアルキルスルホニル基により置換されたイミノ基;
破線は2重結合の有無を,それぞれ表す。)
で示される化合物またはその閉環ラクトン体である化合物。 」(以下、本件発明という。)です。

 主要な引用例は、甲1(特表平3−501613号公報)及び甲2(特開平1−261377号公報)です。これらの引用文献に対して、相違点は以下の通りです。判決文によれば、
「【相違点】
(1−@)
Xが,本件発明1では,アルキルスルホニル基により置換されたイミノ基である
のに対し,甲1発明では,メチル基により置換されたイミノ基である点
(1−A)
R4が,本件発明1では,水素又はヘミカルシウム塩を形成するカルシウムイオン
であるのに対し,甲1発明では,ナトリウム塩を形成するナトリウムイオンである点 。」となります。
 
 Xは、ピリミジン環の2位の置換基となります。論点となったのは、引用例から、ピリミジン環の2位の基を「−N(CH3)(SO2R')」とするという技術的思想を抽出し得るか否かということになります。

 まず、結論から述べると、判決文によれば、
「したがって,仮に,甲2に相違点(1−@)に係る構成が記載されていると評価できたとしても,甲1発明の化合物のピリミジン環の2位のジメチルアミノ基を「−N(CH)(SOR’)」に置き換えることの動機付けがあったとはいえないのであって,甲1発明において相違点(1−@)に係る構成を採用することの動機付けがあったとはいえない。」としています。
 
 つまり、本件発明は、甲1発明に甲2発明を組み合わせることにより、容易に発明できたとは認められない、として進歩性を有するという判断がなされております。

 その理由は、下記の記載となります。すなわち、判決文によれば、
「(5) 本件発明1と甲1発明の相違点の判断
ア 相違点(1−@)の判断
(ア) 原告らは,相違点(1−@)につき,甲1発明に甲2発明を組み合わせること,具体的には,甲1発明の化合物のピリミジン環の2位のジメチルアミノ基(−N(CH)の二つのメチル基(−CH)のうちの一方を甲2発明であるアルキルスルホニル基(−SOR’(R’はアルキル基))に置き換えること,すなわち,甲1発明の化合物のピリミジン環の2位の「ジメチルアミノ基」を「−N(CH)(SOR’)」に置き換えることにより,本件発明1に係る構成を容易に想到することができる旨主張している。
 そこで,甲2発明について検討する。

      ・・・  省略  ・・・

(ウ)a 前記(イ)のとおり,甲2の一般式(I)で示される化合物は,甲1の一般式Iで示される化合物と同様,HMG−CoA還元酵素阻害剤を提供しようとするものであり,ピリミジン環を有し,そのピリミジン環の2,4,6位に置換基を有する化合物である点で共通し,甲1発明の化合物は,甲2の一般式(I)で示される化合物に包含される。
 甲2には,甲2の一般式(I)で示される化合物のうちの「殊に好ましい化合物」のピリミジン環の2位の置換基R3の選択肢として「−NR4R5」が記載されるとともに,R4及びR5の選択肢として「メチル基」及び「アルキルスルホニル基」が記載されている。
 しかし,甲2に記載された「殊に好ましい化合物」におけるR3の選択肢は,極めて多数であり,その数が,少なくとも2000万通り以上あることにつき,原告らは特に争っていないところ,R3として,「−NR4R5」であってR4及びR5を「メチル」及び「アルキルスルホニル」とすることは,2000万通り以上の選択肢のうちの一つになる。
 また,甲2には,「殊に好ましい化合物」だけではなく,「殊に極めて好ましい化合物」が記載されているところ,そのR3の選択肢として「−NR4R5」は記載されていない。
 さらに,甲2には,甲2の一般式(I)のXとAが甲1発明と同じ構造を有する化合物の実施例として,実施例8(R3はメチル),実施例15(R3はフェニル)及び実施例23(R3はフェニル)が記載されているところ,R3として「−NR4R5」を選択したものは記載されていない。
 そうすると,甲2にアルキルスルホニル基が記載されているとしても,甲2の記載からは,当業者が,甲2の一般式(I)のR3として「−NR4R5」を積極的あるいは優先的に選択すべき事情を見いだすことはできず,「−NR4R5」を選択した上で,更にR4及びR5として「メチル」及び「アルキルスルホニル」を選択すべき事情を見いだすことは困難である。
 したがって,甲2から,ピリミジン環の2位の基を「−N(CH)(SOR’)」とするという技術的思想を抽出し得ると評価することはできないのであって,甲2には,相違点(1−@)に係る構成が記載されているとはいえず,甲1発明に甲2発明を組み合わせることにより,本件発明の相違点(1−@)に係る構成とすることはできない。」と判示しています。

 多くを省いて、非常に簡単にご説明すると、
1.甲1には、ピリミジン環の2位の置換基の選択肢として、「−N(R8)」が記載され、さらに、R8の選択肢として、「メチル基」が記載されているものの、「アルキルスルホニル基」が記載されていないこと、
2.甲2には、ピリミジン環の2位の置換基の選択肢として、「−NR4R5」が記載されるとともに、R4及びR5の選択肢として、「メチル基」及び「アルキルスルホニル基」が記載されているが、特に好ましい化合物における置換基の選択肢は極めて多数であること、当該R4及びR5の選択肢として、「メチル基」及び「アルキルスルホニル基を選択する場合には、2000万通り以上の選択肢のうちの一つであること、極めて好ましい化合物の選択肢には、「−NR4R5」が記載されていないこと、などを挙げて、最終的に、甲2から,ピリミジン環の2位の基を「−N(CH)(SOR’)」とするという技術的思想を抽出し得ると評価することはできないと結論付けています。


                                              ページトップへ


                                             まとめ・余談

<まとめ・余談>
 甲1及び甲2は、課題もほぼ共通して、本件発明と極めて近い文献のように思えます。今回の事例は、一般式化された式中の選択肢の一つとして、特定の置換基の記載がある場合、当該特定の置換基を構成要素とする発明に関して、なんとか権利化させたい場合に、参考になるのではないでしょうか?
 権利者側にとっては、把握しておきたい判例の一つかもしれません。



                                              ページトップへ


ホーム事務所概要業務内容弁理士紹介地図採用情報サイトマップお問い合わせ利用規約免責事項プライバシーポリシー特許特許戦略初級実用新案意匠商標 | 外国出願著作権制度 | 判例集よくある質問知的創造サイクル地球を守る技術| 法令集English リンク集

即時出張対応が可能なエリアは以下のとおりです

横浜市18区内:鶴見区・港北区・都筑区・青葉区・緑 区・神奈川区・西 区・ 中 区・ 保土ヶ谷区・ 瀬谷区・磯子区・金沢区・南 区・港南区・戸塚区・栄 区・泉 区
川崎市7区内:川崎区・中原区・高津区・多摩区・宮前区・麻生区
東京都27市:武蔵野市・三鷹市・西東京市・小金井市・国立市・国分寺市・立川市・調布市・府中市・八王子市・日野市・多摩市・狛江市・昭島市・東大和市・武蔵村山市・町田市・福生市・羽村市・あきる野市・青梅市・稲城市・東村山市・清瀬市・東久留米市等
東京都23区内:杉並区・練馬区・世田谷区・渋谷区・中野区・新宿区・豊島区・目黒区・港区・大田区・中央区・千代田区他

発明相談・特許調査・商標調査・知的財産コンサルティング・特許出願・実用新案登録出願・意匠登録出願・商標登録出願・PCT出願・マドプロ・外国出願の事なら坂野国際特許事務所へ
TEL : 045-227-5117 
FAX : 045-227-5118
Copyright (C) 2008−2018 Sakano & Associates. All Rights Reserved.